2011年03月24日(木)
4月10日はなやぐらの会・読売新聞掲載(3月28日夕刊)
鶴沢寛也、竹本駒之助と「阿古屋琴責の段」情景浮かぶ演奏を楽しく
「正月の玉三郎さんの舞台を見ました。私も観客を感動させるような三味線を演奏したい」
女流義太夫三味線弾きの鶴沢寛也が、浄瑠璃の名作「壇浦兜軍記 阿古屋琴責の段」の演奏に挑む。
4月10日午後1時、東京・紀尾井小ホール。浄瑠璃語りは人間国宝の竹本駒之助。寛也が駒之助の胸を借り、三味線の魅力を紹介する。(塩崎淳一郎)
源平の時代。姿を隠した平家の景清の行方を追及するため、源氏は景清の愛人である遊女の阿古屋を捕らえる。重忠は彼女に琴、三味線、胡弓(こきゅう)を演奏させ、心に乱れがないかを探る。
今回は、主要部分を約1時間をかけて上演。人形を遣わない素浄瑠璃となる。
寛也は、自らが主宰し、8年目を迎える「はなやぐらの会」でこの曲に挑む。これまで「寺子屋」や「野崎村」などの名曲を演奏し、技量を高めてきた。
4年前、駒之助が「阿古屋」を語った舞台で、三味線のツレ(助演)を経験。「稽古を重ね、緊張感のある勉強を積んだ。一人で勉強する何倍もの密度で演奏した」と振り返る。2年前、初めてシン(メーン奏者)を務め、「無我夢中で取り組んだが、宿題が残った」。今回、満を持して自らの会での上演を果たす。
「格調高い場面があるかと思えば、はんなりとした部分もある。物語の筋を離れ、音曲として楽しんでもらえるように」と寛也。師匠の鶴沢清介から「後半部分は音楽的に華やか。格の高さも大事だが、演奏者自身も楽しみ、観客を喜ばせるように」との助言を受けた。寛也は「太夫の駒之助師匠が語りやすく、情景が浮かび上がるように演奏したい」と語る。
津田塾大数学科を卒業した異色の経歴を持つ。「学生時代に歌舞伎座に通い、義太夫に興味を持ったのが始まり」で、本場の大阪に居を移し、10年近く修業を続けた。今は東京を中心に中堅として活躍する。
「本来は男性のものである芸を、女性の体を通して表現するのが女流義太夫。性の違いは、人生経験の違いでもあり、作品解釈でも必ず異なるはず。そこに男性と違う魅力がある」
当日は、演奏前に作家の橋本治が解説を行う。ツレは鶴沢津賀栄、三曲は鶴沢津賀花が務める。(電)03-3541-5471
(2011年3月28日 読売新聞 掲載)写真・福田知弘